妻は、テレビのサスペンスについては、すごい集中力でチェックを欠かさず録画している。
このことは、以前に書いたと思う。
もう一つ、集中力を発揮する対象があって、それがマンガ、コミックである。
毎週、レンタルショップに通っている。
割引で借りられる曜日に行って10冊くらい借りてきて、返してまた借りる。
そんな生活を、この10年以上は続けている。
ほとんど、毎週であり、感心してしまう。
そういえば結婚する前から「チッチとサリー」を買っていて、完結するまでずっと買っていた。
「ゴルゴ13」の新刊が出ると、私のために借りてきてくれる。
現在199巻だそうである。私が、中学生の頃に始まって、50年以上ってすごすぎる。
我が家にも、数十冊並んでいたこともあった。
ときどき、これおもしろいよ、と勧めてくれたりする。
「薬屋のひとりごと」というのが、今回のおすすめだった。
大陸中央のとある大国ということで、架空の時代の架空の国が舞台である。花町で薬屋をやっていた娘が、とある事情で後宮の下働きになり、帝の寵妃の毒味役にされる。
毒とクスリに異常な執着を持つ主人公が、後宮内での事件に巻き込まれていくというお話である。
まあ、最近よくありそうな設定だな、と読み始めたのだが、気になったのが表紙にあったスタッフの記載である。
原作 日向夏 作画 ねこクラゲ 構成 七緒一騎 キャラクター原案 しのとうこ となっている。
なるほど、分業制なんだな、と思ったが、「原作 日向夏」の後にカッコ書きがある。
どういうことだと思い、調べてみた。
どうも、先に小説として刊行されたのを、マンガ化したものらしい。
ノベライズならぬ、コミカライズと言うそうだ。
しかも、同じ小説を同じタイトルでコミカライズしたものがもうひとつある。
倉田三ノ路という方が、作画であり、こちらには、「猫猫の後宮謎とき手帳」というサブタイトルがついている。猫猫はあだ名で、ミャンミャンである。
レヴューを読んだところでは、こちらの方が原作に近い描き方で、ストーリーがわかりやすいらしい。
今は、こうゆうこともあるのだな。
マンガの世界も、時代とともに変わっている。
最近の流行は、職人ものなのかな、「職人」とはちょっと違うか。特別な技術や知識を持った主人公もの。
「薬屋」と聞いた時、何年か前に読んだ「蟲師」を思い出した。
ヒーロー文庫のリストを見たのだが、タイトルだけでもおもしろい。
タイトルから抜き出してみると。
異世界、転生、騎士、傭兵、魔法、軍師、魔導士、魔術師、冒険者、救世主、
そして、
探偵、パン屋、召喚士、ペテン師、処刑人、武器屋、料理番、調合士、食堂、薬師、
わかったようなのから、ちょっとわからないのまである。
長男のおすすめで、読んでいるものもある。
幸村誠という方の「ヴィンランド・サガ」で、今第19巻まで読んだ。
11世紀の北ヨーロッパから、世界を席巻したヴァイキングを描いている。
主人公は、ヴァイキングとしての殺戮の日々から、奴隷の身分を経て、新天地ヴィンランドをめざす物語である。
タイトルの「ヴィンランド」は、北アメリカ大陸にあったとされるヴァイキングの入植地である。世界史が苦手だった私にとって、この頃のヨーロッパ、特にイギリスとヴァイキングの関係は驚きであり、興味深いものだった。
このようなものを日本の漫画家が描いていることがおもしろいと思う。
しかもこのマンガは、アニメとなって世界の人たちが観ている。
日本のマンガは、世界のいろいろな国々を描いている。
いろんな意味で、日本のマンガの世界は、描くことの制約が少ないのかもしれない。
私と妻のような年齢でも、日本では漫画を読んでいる。
私たちが子どもだった頃、年配の人たちはたぶんマンガを読んでなかった。マンガは、子どものためのものだった。
その後、マンガは青年向けのものも描かれるようになっていく。
「ビックコミック」が、1968年に 創刊された。
1972年には「ビックコミック・オリジナル」が、1980年には「ビックコミック・スピリッツ」が創刊されている。
私の記憶によれば、高校生の頃、すでに貸本屋では貸本専用の青年向けマンガが置いてあった。劇画系が、中心だった。
そういう状況を考えると、私よりもひと世代上の年代、今の70代から80代はマンガ世代である。
手塚治虫、さいとう・たかを、石ノ森章太郎、白土三平、水木しげる、藤子不二雄など、そうそうたる顔ぶれの漫画家は、読者の成長とともに、大人向けのマンガを描き続けてきたことになるのだろう。