ゼンリンという会社が発行している「住宅地図」というものがある。
ある程度の規模の書店だったら、地図コーナーにその地域近辺の市の住宅地図が置いてある。
かなり高価なので、個人の趣味用に買う人はいないだろう。
私のように地図好きでも、買えるような値段ではない。。
仕事上で必要な会社が、買うものだろう。
私も、勤めていた時は仕事上必要なので職場で購入していた。
毎年、最新の内容の新版が発売されていた。
なにしろ、「一軒一軒、一戸一戸の建物名称・居住者名・番地を大縮尺の地図上に詳しく表示」しているので、業種によっては必需品である。
WEBページには、こういう文章がある。
「商店・飲食店の配達や各種宅配・運送業の場所確認、不動産業の物件管理、銀行・保険など金融業務の顧客管理、自治体・官公庁・公共団体の住民サービスなど、ゼンリン住宅地図は日本全国、多様な業務で広くご利用いただいています。」
まったく、そのとおりだと思う。
今は、どれくらいかなと思い調べてみた。
柏市は広いので、2分冊である。
北部版が19,800円、南部版が30,800円もする。
縮尺はA4サイズで1/2000,1/4000、B4サイズで1/1500,1/3000で、値段は同じである。
なかなかの値段だが、一戸一戸の居住者名があるとなると、情報量としてはすごいものだ。
集合住宅については、巻末にまとまって居住者の表があったと思う。
この時世なので、これからはプライバシーなどが問題になってくるかもしれない。
創業者の大迫正冨氏の好んだ「善隣友好」ということばから、社名がつけられたそうだ。
軍事機密になりうる地図は、平和でなければ地図は作れない、という思いが込められている。
ゼンリンという会社は、別府市で観光案内を発行していたが付録の市街地図が好評だったので、1950年に地図出版にシフトし「善隣出版社」を設立している。
1954年に、福岡県小倉市(現北九州市)に移転し、現在も本社は北九州市にある。
以降、住宅地図の発行エリアを順次拡大を進め、1980年には全国47都道府県で住宅地図発行を開始した.
あわせて、地図のデータベース化も着手し、デジタル化を進めた。
住宅地図を扱う会社は、全国に10社くらいはあるようだが、限られた地域で活動していて、全国展開しているのは、ゼンリンだけである。
国土地理院の調査では、日本のような「住宅地図などの民間業者による大縮尺地図は、世界的にみて例外的な存在」であるとのことである。
定年退職後、何かアルバイトでもやろうかなと考えた時に、ゼンリンの松戸営業所で調査員を募集しているらしいというのを知って調べてみた。
残念ながら、その時には募集していなかった。
私のように、歩くのが好きで、地図が好きな人間には、おあつらえ向きの仕事だと思ったのだが、タイミングが合わなかった。
住宅地図は、最新の情報が必要なので常に全国で、1000人くらいの調査員が活動しているそうだ。
やはり、情報というのは目で見て確認することが重要なのだと思う。
それを考えていたら、明治時代に陸軍がつくっていた「フランス式彩色地図」を思い出した。
あれは、2人組の担当者が、目で見て土地利用の状況や、集落の住居の配置を、「桑」という漢字や、□という形で住居を一戸一戸を手書きで表示していた。
いくらデジタルの時代でも、情報を確認するのは人間である、ということなのだろう。