何年前くらいに、なるだろうか。
ピンホールカメラというのが、話題になったことがある。
ピンホールカメラというのは、写真レンズを使わず、ピンホール(針穴)を利用したカメラだそうだ。
被写体の光を、針穴を通して、像面に像を得るという、最も単純なカメラの方式なのだそうだ。
箱に、針穴を開けて、反対面にトレーシングペーパーなどを張った窓を作れば、外の景色などが直接観察できる、ということだった。
外の景色などが写る、というのを読んでいて、子どもの頃の記憶がよみがえった。
小学生の頃、学習机がわりに使っていた座敷の文机の前の障子に、外の景色が映っていたことを思い出した。
上下左右は、反転していたが、カラーで映画のようにきれいだった。
障子の前には、木の雨戸があったので、その節穴がピンホールになっていたのだ。
私の住んでいた家は、たぶん典型的な農家の作りだった。
座敷が、二間あって、奥の間には床の間があった。
床の間の隣には、文机として使えるようなテーブルになっていた。
調べてみたら、「付け書院」というものらしい。
どうも、書院造の流れをくむものらしいが、どこの家も同じような作りだったと思う。
造り付けの文机の前は障子になっていたので、明るく読み書きができるようになっていた。
もちろん、障子の先には雨戸があったのだが、昔のことなので木製で節穴があったということだ。
子ども部屋などなかったので、中学生になって物置を、勉強部屋として使えるようになるまでは、そこを使っていた。
この記憶を思い出したので、さっそくピンボールカメラもどきを、作ろうとしてみた。
ボール紙で箱を作り、針穴を開ける。
その対面には、薄紙を張ってスクリーンにする。
なんとか、スクリーンに景色は映ったが、まわりが明るいので、今ひとつ鮮やかさが足りない。
子どもの頃の、真っ暗な農家の家の中で見た、障子のスクリーンに映った外の景色が、いかに色鮮やかだったことか。
子どもの頃に読んでいた雑誌には、工作する付録が付いていた。
「日光写真」というのがあった。
型紙と印画紙を使って、日光の光で写真にするというものだたった。
「カラー映写機」というやつ。
カラーのビニール製のフィルムが付いていて、家庭の電球を使って、映像をスクリーンにうつすというけっこう凝ったものだった。
これは、あまりうまくいかなかったような気がする。
「立体写真」もあったな。
左右に赤と青のセロファンが貼ってあるメガネで、赤インクと青インクでずらして印刷した画像を見ると立体的に見える。
これは、今でもあるんじゃないのかな。
ディズニーランドのシアターでも、似たような原理のメガネをかけたことが、あるような気がする。
いつの時代も、似たようなことをやってる。
映像は、やっぱり子どもにとっては、だいじなもので、忘れがたいものである。