テレビの電源を入れたら、「昆虫すごいぜ」という番組だった。
香川照之さんが、進行する昆虫研究の番組だった。
香川さんは、カマキリのかぶりものをかぶっていた。
昆虫研究というよりも、昆虫オタクの香川さんによる昆虫採集の番組らしかった。
以前にも、一、二回この番組を見かけたことはあったが、じっくり見たことはなかった。
今回は、今まで放送したもののスペシャルらしかった。
なので、通常はどんな放送内容なのかよくわからない。
香川さんは、この番組では「カマキリ先生」ということになってる。
今回の対象は、タガメで2年前にコスタリカにロケに行った内容が放送されていた。
なんと、この番組は2016年から放送されているらしい。
番組の最後まで見てしまったが、香川さんの昆虫に対する愛情というか、のめり込み方が並大抵ではないことを感じた。
香川さんは、私の好きな俳優さんであり、気になる人であったのだが、少し見方が変わった。
本人は、「本当にやりたい仕事にめぐり会えました」、「これが僕の代表作です」、と言ってるらしい。
私は、田んぼに囲まれた農家で、生まれて育った。
だから、昆虫たちはあたりまえに、いつでもどこでもいた。
夏になれば、田んぼの上は蛍が乱舞していた。
あたりまえすぎて、昆虫について特別な関心を持って、のめり込むことはなかった。
それでも、ファーブルの昆虫記は小学生の頃に読んでいる。
高校一年の夏に、隣町の市街地に転居した。
町の中心地だったので、畑も田んぼも近くにはなかった。
町はずれにある高校まで、毎日徒歩で登校していた。
むしろ、高校のまわりの方が畑があった気がする。
子どもの頃を思い出すと、「佃煮(つくだに)」という食べ物があった。
佃煮は、小魚や貝などを、醤油と砂糖で甘辛く煮つけたものである。
イナゴの佃煮があったことを、思い出した。
イナゴやバッタの、イナゴである。
海の小エビの佃煮もあったのだから、陸のイナゴも似たようなものだった。
素材を丸ごと使っているのだから、栄養的にも文句のないものだったのだろう。
最近は、佃煮といってもあまり存在感がないかも知れない。
佃煮の行商は、定期的に田舎にも来ていた。
東京の佃島の漁師たちの、常備菜・保存食だったというのは、よく知られていた。
手塚治虫先生は、「オサムシ」という昆虫の名前を、ペンネームに使った。
同じように、昆虫に対して思い入れのある方は、多いのだろう。
私には、そこまでの思いはない。
しかし、都会の人たちのゴキブリへの態度には違和感がある。
どうして、あそこまで嫌うのだろう。
それが、ゴキブリの生息する場所にあるのだろうということは、わかる。
衛生的ではない場所で、生活していると思われている。
清潔好きな人たちにとっては、我慢できないのだろう。
ほんとにそうなのか、という気がしないでもない。
ゴキブリの古名は、「 あくたむし」や「つのむし」だったらしいが、江戸時代に「アブラムシ」と呼ばれるようになった、とある。
明治になって、「ゴキカブリ」の「カ」が欠落して、「ゴキブリ」が、定着した。
現代の人たちにとっては、虫はいない方がいい存在なのだろう。
「虫もいないような場所は、ろくなものではない」という田舎育ちの私のような人間のことばは、説得力がないだろうな。