晴耕雨読    趣味と生活の覚書

  1953年秋田県生まれ。趣味は、山、本、音楽、PC、その他。硬化しつつある頭を柔軟にすべく、思いつくことをなんでも書いています。あわせて、江戸時代後期の紀行家菅江真澄の原文テキストを載せていきます。

人が生きた証し

「人間は二度死ぬ」ということばがある。

ある方が、これは古代ローマとか中世ヨーロッパとかの思想家のことばかと思って、引用しようと出典を調べると、近代の俳優のことばだった、と書いていた。

俳優が誰かは、書かれていなかったので、調べてみた。

調べた結果わかったのは、俳優は松田優作さんだった。

ほんとに、これが正確なのかわからない。

「人間は二度死ぬ。肉体が滅びた時と、みんなに忘れ去られた時だ。」

松田優作さんは、このように言ったらしい。

人間にとって、最初の死は肉体的な死である。

そして、その人を知る人の記憶から消えた時に、ほんとの死が訪れる。

そういうことだとすると、もっと以前に同じようなことを言った人がいても、おかしくはないような気がする。

 

記憶から消えた時がほんとの死、なるほどと思った。

そして、亡くなった父と母、それから姉のことを思った。

父は、もう30年も前に亡くなっている。

三男が生まれる前に、亡くなっているので、長男はかろうじて父の記憶があるかもしれないが、次男ははたしておぼえているか。

数年前に亡くなった母は、孫やひ孫に囲まれていたので、ひ孫の記憶にもしっかり残っている。

私より五歳上だった長姉は、50代半ばで病気で亡くなった。

病室のベッドの上で、自分の生まれたばかりの初孫を抱いて、何日か後に亡くなった。

その初孫は、今年大学生になった。

人、それぞれである。  

 

三度目の死もあるのではないかと、言ってる人もいるらしい。

その人が残したものが、無くなった時が三度目の死なのではないか。

技術系の人だったら、それは橋だったり、道路だったりするだろう。

大工さんだったら、神社だったり、寺院だったり、住宅だったりする。

文章を書く人だったら、書籍として残る。

松田優作さんのように俳優だったら、映画として残る。

それが、その人と明確な関係が残されてる場合もあるだろうし、曖昧な場合もあるだろう。

そのようにして、その人が関わったものが残っている。

三度目の死は、ずいぶんと長い年数を経て訪れるだろう。

 

「人は二度死ぬ」という言葉を見ていて、同じような言い方があったと思った。

思いあたったのが、「007は二度死ぬ」である。

日本を舞台に制作されて1967年に公開された映画である。

調べていて妙なことに気がついた。

原題は、“You Only Live Twice"なのである。

「二度死ぬ」ではなく、「二度生きる」なのである。

 「007」シリーズの原作者であったイアン・フレミングが来日した時に、松尾芭蕉の俳句にならって、英文俳句をつくった。

"You only live twice:Once when you're born,And once when you look death in the face." (人生は二度しか無い。生まれた時と死に直面した時と。)

もともと、英語にある慣用句“You only live once"(人生は一度っきり)をもじったものだという。

これだと、死に直面した時に、自分の人生の意味を知るということだろうか。

これが、映画のタイトルになったらしいが、日本語に訳されたものは微妙にニュアンスが違ったものになっている。

 

これと似たようで、ちがう言葉が他にもある。

フランスの思想家ルソーは、「エミール」の中で次のように述べている。

「わたしたちはいわば二回この世に生まれる。

一回目は存在するために生まれ、二回目は生きるために、はじめは人間に生まれ、次に男性か女性に生まれる。」

赤ん坊として、この世に誕生すること。

思春期を経て、ひとりの人間として生きていくこと。

そのことを、言ってるのだろう。

 

考えてみると、日本で言われている「人は二度死ぬ」ということは、人を外側から見ている気がする。

生きている人と人の関係で、人間というものが成り立ってる、ということをどこかで聞いたことがある。

それに対して、あとであげたことばは、人を内側から見ていることになるのかな。

 

 

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