阿蘇山が噴火した映像を、ニュースで見た。
火口の麓にある駐車場のライブカメラの映像だった。
白い噴煙が、そのうちに巨大な爆発になって黒い煙の塊が立ち上がって、駐車場の方向に向かって来る。
映像には、音声がないので現場の状況が今ひとつ伝わらないが、かなりの爆発音はしただろう。
駐車場には、かなりの自家用車が駐車していて、観光バスも4台駐車していた。
火砕流のような黒いけむりの塊が、近づくにつれて、ちらりほらりと自家用車が駐車場を出て行く。
危険を感じて、逃げて行くように見える。
ところが、多くの自家用車はそのままで、人は戻って来ない。
4台のピンク色の観光バスの近くには人影は無く、動く気配もない。
そのうちに、黒い煙は動きが遅くなり、駐車場に到達しなかったようだ。
多くの自家用車はそのままで、観光バスもそのままだった。
乗客は、どこにいたのだろうか。
御嶽山のことなどを考えなかったのだろうか、大丈夫なのかな、と思った。
今は、世界でどんなことが起きたのかが、映像で見ることができる。
火山の大噴火も、大洪水も、大津波も、見ることができる。
人間の手ではどうすることもできない自然の脅威である。
YouTubeには、これとは違って、人間が叡智を尽くしてつくった建築物を、叡智を尽くして壊すという映像もある。
老朽化した高層ビルなどを、解体工事する映像が、数多く見つけることができる。
地上何十階などという高層ビルを、作り始めたのは20世紀になってからだろう。
どんなビルにも寿命があるだろうから、そろそろ使えなくなるものが続々と出てくる。
たぶん、将来取り壊すことになるなんてことは、考えることなくつくったのだ。
YouTubeにあるのは、ほとんどがアメリカのビル解体である。
英語だと、Building Demolitionとなっていて、解体というよりも破壊である。
ビルの下部に爆薬を仕掛けて破壊し、上部は順に崩れ落ちるようにしている。
そのやり方が、アメリカでは主流のようだ。
いろんな映像を見ていると、時には失敗がある。
ビルの上部が崩れ落ちる途中で、止まってしまう。
破壊の途中で、止まったビルが残される。
再度、爆薬を仕掛けて続きをやる必要があるだろうが、いつ崩れるかわからないような危険な建物にどうやって近づくのだろうと思う。
見るたびに、不思議でならないので、その後の作業を見たくなる。
アメリカのビル解体の現場は、まわり数百メートルは何もないところでやっている。
ビルが崩れ落ちる時に、とんでもない瓦礫が飛んだり粉塵が舞う。
考えると、不思議である。
どうしてまわりに、建物がまったくないのだろう。
まわりの建物は、どうしたのだろう。
これに対して、日本のビル解体はまったく違うようだ。
私の行動範囲で、病院の建物の解体工事が行われている。
5、6階建ての建物で、それほど老朽化してる感じではなかったが、病院自体はすでに、駅の近くに新築して移転していた。
工事のお知らせには、アスベスト撤去作業の表示があったので、それが移転の理由だったのかもしれない。
現場は、すべて囲われていてシートで覆われていたので、詳しい作業はわからなかった。
途中から外から見えるようになった頃には、ビルの内部は崩されていた。
そして、外壁だけが残されていて、最後に崩された。
工事が始まって半年近くなると思うが、まだかなり瓦礫が山積みになっている。
日本では、建物の近くには住宅などの建物が隣接していることが多いので、爆薬で破壊するような方法は使えない。
業者によって、得意とする方法で解体しているらしい。
だるま落としのように、ジャッキを使ってビルの下の階から解体して行く方法や、ビルの上の階から解体していく方法もあるらしい。
長期の工事を要するもので、むしろビルを建築することより難しいのではと思われる。
テレビの番組で知ったのだが、日本では古い木造建築物を解体した際の木材が、建築材として高価に取引されている、ということだった。
木材だけでできているような建築物には、太い立派な木材が使われているし、年数が経っている方が使い勝手がいいのかもしれない。
私が、生まれ育った家は木造の農家だった。
農家の末子だった父が、分家になる際に本家が建ててくれた家だった。
まったくの新築ではなく、どこかの村で解体した家を買って、移築したものだった、ということを聞いた気がする。
だから、大黒柱や屋根裏の梁などは、長年の囲炉裏の煙で黒光りしていた。
古い日本の建築物は、木材だけでできているようなものなので、分解して、また組み立てるようなことができたのだろう。
でも、コンクリートでできた建物を解体したとしても、あの瓦礫の山のどれくらいが再利用できるのだろう。
せいぜい、鉄筋コンクリートの鉄筋くらいだろうか。