妻の母が入院している病院の会計カウンターに座っていた。
月に一回、入院費の支払いのためである。
担当者の背後に、PPC用紙のストックが積んであった。
その日はたまたまそれが目についた。
A4,B5,A6というサイズのコピー用紙だった。
私は、40年ほど事務系の仕事をしていたので、こういう事務用品や事務機器は気になってしまう。
まだ、B判が使われている。
コピー用紙といったら、「PPC用紙」として売られている。
PPCというのがどんな意味なのか知らないで使っていた。
“plain paper copy"なので、普通紙コピーということらしい。
普通紙ということなので、特別な加工はされていない。
この反対は、「専用紙」になるから、むかし使ってた「感熱紙」は、表面に薬品で加工していたのだろう。
ワープロやファクスなんかの用紙に使っていた気がする。
私が就職したのは、1970年代の中頃だが、職場にあったコピー機は、「湿式」のものだった。
詳しくは覚えてないが、コピーすると濡れた感じの仕上がりで、乾かす必要があった。
たぶん、専用紙だったと思う。
しかも、地の色もグレーぽくてきれいなものではなかった。
それより以前には、「青焼き」というものが使われていたらしいが、私は扱ったことがない。
職場に保管してある建物の「設計図」や施設の「図面」は、青っぽい大きな用紙だった。
それがいつの間にか、トナーを使う「乾式」のコピー機に変わっていった。
平成になってからなので、1990年代だと思うが、「文書のA判化」というのがあった。
それまで、文書の用紙が、B判とA判が併用されていたのを、国際的規格であるA判に統一するというものだった。
日本では、元々が「わら半紙」のようなB4が使われていて、保管する時は、袋とじをしていた。
「A判化」によって、たしかに保管文書はA4になった。
でも、必要に応じてB判を併用していた。
A4ですべて間に合わせることはできないし、かといってその倍のA3は大きすぎるし、A5は小さすぎる。
我が家で使っているプリンタとスキャナーの複合機は、A4とB5に対応している。
コンビニに行けば、スキャナーとコピーの複合機があるが、これはA3、B4、A4、B5と、すべてに対応している。
図書館でも、同じようなものである。
図書館では、カラーコピーができない機種があったりするけれど。
病院でも、B5サイズも使っているようだった。
B判とA判は、サイズ的には、補完するようになっている。
併用すると、丁度いいサイズになってるのだ。
どうして、A判とB判という二つの規格があるのだろう。
不思議なので、調べてみた。
A判は、19世紀のドイツで、物理学者のオズワルドが提案したもので、現在では国際規格になっている。
面積が1平方メートルの「ルート長方形」をA0(841mm✖️1189mm)としたのだという。
「ルート長方形」というのは、縦横比率が「白銀比」といわれる「縦:横=1:√2」であって、長辺で半分にすると、縦横比率は変わらない相似形の長方形である。
「黄金比」という言葉は聞いたことがある気がするが、「白銀比」は初めて見た。
ずいぶんと、科学的なものなのだ。
日本も、この「A判規格」を使おうとしたが、不具合があったらしい。
出版業界では、いろんなサイズの紙が使われてきたらしい。
四六判、菊判、新四六判、菊半截、三五判、四六倍判などである。
雑誌などでは、菊判が主流だったが、A5がそのサイズに近かった。
ところが、書籍の主流だった四六判は、A判規格では対応できなかったらしい。
A判規格を1.5倍すると、四六判が取れそうということで、B判規格をつくった。
縦横比率はそのままに、面積1.5平方メートルがB0(1030mm✖️1456mm)としたのだ。
これだと、B6が四六判に近くなった。
そういうことで、二つの規格を使っている。
私は、地図好きであるが、国土地理院の地図のサイズは、A判でもなくB判でもない。
柾判という46cm✖️58cmのサイズで、A判やB判とは縦横比率が違っているようである。
明治時代に、20万分の1地勢図を作ろうとした時に、一枚の地図に一定の緯度経度の範囲を収めようとした事情があるらしい。
ほかにも、紙の世界には和紙独自の規格があるようだ。
もっと調べてみると、おもしろそうである。
無理に規格をひとつに統一せず、いろんな規格を併用してるのは日本らしいと思う。
経済的には、効率的ではなさそうだが、それ以上のものがあるのだろう。