この夏、無人野菜販売所が近所にできた。
団地に隣接する柏市の公園の隣に、普通の一軒家があり、その入り口にある。
テーブルが二つ出ていて、その上に野菜が並べられている。
テーブルの上には、ビーチパラソルが二つ立てかけてあった。
野菜は、ほとんどが100円で、ふぞろいだったり、傷があったりするが、とても安い。
たしかに、出荷するには、厳しい規格を満たす必要があるのだろう。
料金箱は、テーブルに置かれた小さな金庫型の貯金箱である。
無人の販売所があるのは、日本ぐらいだと言われる。
日本だって、犯罪がないわけではないし、警察が必要な社会である。
ネットの書き込みを読むと、ヨーロッパの国でもかつてはそういうものがあったし、今でも所によっては、あるらしい。
何が、そういう違いになってるのだろう。
駐車場に近いところなので、時々のぞいていた。
三回目くらいの時に、野菜を見ていたらご主人に声をかけられた。
私より、5、6歳年上かなというご主人に、疑問に思っていたことを、聞いてみた。
この野菜、どこで育ててるんですか。
そのお宅には、畑のための敷地があるようには思えなかったからだ。
ご主人の実家は、消防署の向かいにある農家だった。
その他に、兄弟も近くに住んでいて野菜をつくっているという。
実家であるという農家は、この辺りでは他に見ないような広さである。
敷地の南面は、100メートル以上にわたって道路に面しているが、背の高い生垣になっていて、中がよくわからない。
その他の三面は、深い森林に囲まれていて、ほとんど見えなかったが、最近その森林の一部が伐採されて少し見えるようになった。
ビニールハウスが、何棟もあるようだ。
販売所に、今並んでいるのは、ナス、キュウリ、ウリ、ピーマン、ジャガイモなどである。
店が始まったのは、6月頃だったが、その頃はトマトも並んでいた。
ときどき、妻といっしょに行くこともある。
ミョウガがあることもあり、妻はミョウガ好きなので、買うことにしている。
私は、農家育ちである。
農家の敷地の四方を、水田で囲まれていた。
農家は、敷地の中に、家族用の野菜を育てるための畑がある。
我が家も、建物の北側と東側に畑があった。
それぞれの野菜を、3畝とか4畝というように、いろんな種類を育てる。
今のように、お店でなんでも売ってるという時代ではなかったので、ほとんど畑のもので育った気がする。
動物性タンパク質と言えるようなものは、ニワトリの卵くらいだった。
きりたんぽには、鶏肉を入れるが、それも一冬に一回か二回くらいのものだった。
魚類は、冬になると行商人が、カゴを背負ってやってきた。
ハタハタの採れる季節になると、ハタハタを山積みしたトラックがやって来るので、木箱ごと買っていた。
そういえば、佃煮の行商人もやってきた。
魚介類の佃煮にだけではなく、イナゴの佃煮もあった。
イナゴは、野原にいくらでもいたが、自家製を作ったこともあったかも知れない。
それが、動物性タンパク質と言えるものだったかな。
私は、ほとんど田んぼと畑のもので、育ってきたと言える。
水田があるので、麦は栽培されていなくて、麦畑を見たことがなかった。
当然、うどんもあまり食べたことはなかった。
同じ、秋田県でも広いのだ。
同じように、そばを食べる文化はなかったような気がする。
でも、我が家の小さな畑で、ソバは育てていたので、そばの白い花と、ふしぎな形のソバの実は知っている。
でも、麺としてのソバを食べた記憶はないので、どのようにして食べていたのだろう。
私が、田んぼと畑のものだけの食生活だったのは、15歳までである。
高校生の時に、街に引っ越したので、そのあとはなんでもありの食生活になった。
スーパーに行けば、肉も魚も、インスタントラーメンも売っていた。
食べ物については、好き嫌いがないのでなんでも食べる。
でも、野菜が好きなのは変わっていないので、肉や魚が無くなっても、大丈夫かもしれない。