晴耕雨読    趣味と生活の覚書

  1953年秋田県生まれ。趣味は、山、本、音楽、PC、その他。硬化しつつある頭を柔軟にすべく、思いつくことをなんでも書いています。あわせて、江戸時代後期の紀行家菅江真澄の原文テキストを載せていきます。

それぞれの終楽章

芥川賞直木賞の発表があった。

この賞の選考は、1月と7月と年に2回なので、けっこうせわしない。

それぞれの賞の受賞者は、一人か二人らしいので、毎年数人の受賞者が生まれる。

今回の授賞式が172回目だというから、いったいどれくらいの受賞者がいるのだろう。

だいたいが知らない人が選ばれて、しばらくマスコミの話題になる。

私のように、普段新しい小説を読むような生活をしていない人にとっては、名前を覚えることもなく通り過ぎていく。

今回の記事のタイトルは、こんなものだった。

芥川賞は「最も過剰な2作」、直木賞「ダントツに高得点」 第172回選考委員会講評から』

book.asahi.com

 

「最も過剰な2作」、「ダントツに高得点」

これは、なんという表現、いったいどういうことだろう。

芥川賞が安堂ホセさんと鈴木結生さん、直木賞が伊与原新さんという、やはり聞いたことのない方だった。

機会があったら、読んでみたい気がする。

 

ところで、不思議に思うのだが、世の中に文学賞というものは、数えきれないくらいにあると思われるのに、どうして「芥川賞直木賞」はあんなに権威のあるものになってるのだろう。

他にも、大手の新聞社や出版社が関わっている文学賞もあるだろう。

賞の運営は、日本文学振興会という組織がやってるらしいが、その事務局は文藝春秋社内にあるようなので、全面的にバックアップされているのだろう。

考えてみると、やはり、「芥川賞直木賞」は、純文学と大衆文学がセットになっているのが大きな意味があるんだろう、という気がする。

日本文学振興会によると、芥川賞は純文学の中短編作品、直木賞はエンターテイメント作品から選ばれるとのこと。

どちらも、新進作家を対象にしているが、直木賞は中堅作家も含み、単行本となったもの、芥川賞は雑誌に発表されたものとなっていて、この違いがよくわからない。

ところで、また不思議なのが「芥川賞」が芥川龍之介でわかるが、「直木賞」の直木三十五という作家である。

作品を読んだこともないし、名前を知ったのもずいぶんと後になってからだった。

やっぱり、大衆文学というのは忘れられてしまいやすいものなのだろうか。

 

私も20代までは、日本文学全集など揃えたりして、人並みに小説を読んでいた。

その後、そういうものに興味が無くなって、ほとんど読んでいない。

それでも、芥川賞直木賞が話題になった頃に、何回か受賞作を読んだ記憶がある。

漫才の又吉直樹さんが、芥川賞を受賞したのは、2015年だそうだ。

受賞作の「火花」という本を、妻が友人から借りてきた。

妻が読み終わった後に、私も読んでみた。

子供の頃から、漫才は好きだったので、おもしろくてすぐに読み終わった。

漫才の世界の若手芸人と先輩芸人の物語だったが、借りた本なので、読み返していない。

それにしても、芥川賞直木賞の違いが今ひとつわからない。

純文学と大衆文学の間には、どのあたりに線がひかれているのだろう。

 

さらに何年か前に、冲方丁さんの「天地明察」という作品を読んでいる。

これは文庫本で読んだ記憶があるので、作品が発表されてすぐではなかったと思う。

直木賞受賞作品だと思い込んでいたが、今回調べたら直木賞候補作品だった。

作品は2009年発表で、翌年2010年の候補になったようだ。

そして、2012年に映画化されているので、私はその時に読んだのだろう。

江戸前期の囲碁棋士であり天文暦学者でもあった安井算哲の生涯を描いた物語である。

安井算哲を岡田准一さんが演じたので、かなり話題になっていた。

幕府お抱えの囲碁棋士なので、将軍の前で囲碁を打つ上覧碁というのがある。

そして、天文暦学者でもあった彼が、将軍後見人の保科正之に認められて、北極星の測量のための「北極出地」に同行を命ぜられる。

それまで使われていた「宣明暦」に不具合が出ていたので、正確な暦を作成するためである。

測量隊の上役の建部伝内、伊藤重孝を、笹野高志、岸部一徳が演じていて、そのあたりがこの映画で、もっともおもしろかった。

算哲の100年ほど後の人である伊能忠敬の測量隊も、こんな感じだったのかと思わせた。

 

直木賞といえば、私が30代の頃、1980年代に「それぞれの終楽章」という小説が受賞した。

何かの記事で、この小説を書いた阿部牧郎という小説家が、秋田県出身で、しかも私が卒業した高校出身だということを知った。

すぐに本を買って、読んだ。

さびれている故郷の街や、高校時代の応援歌などが描かれていて、印象に残った。

そのことを、年配の同僚に話したら、読んでみたということで、貸してあげた。

ところがその後、返してもらう機会がなく、貸しっぱなしになった。

 

この本のことを思い出したら、気になってネットで調べてみた。

私は書名を、「それぞれの最終楽章」と思い込んでいたので、それで検索した。

そうしたら、朝日新聞が5年くらい前から、連載しているシリーズが見つかった。

これは、どうも医療や介護についての、まさに「最終楽章」だった。

そこで、阿部牧郎さんの作品は、「それぞれの終楽章」であることに気がついた。

講談社発行の書籍の紹介文には、こうあった。

 

「自殺した同級生の葬儀に故郷秋田を訪れた作家がふりかえる自らの生の軌跡。友と聴いたクラシック、仲間と励んだ雪の中の野球……万引事件や生家の破産を越えて胸に迫るのは懐しい思い出の数々。人生の終楽章を迎えて、自分を支えてくれた友人、父の愛、妻の献身に気づく。胸を打つ感動的な直木賞受賞作。」

 

読み返していないので、ほんの一部しか記憶に残っていない。

いろいろと、調べていたら興味深いことがわかった。

阿部さんは、京都生まれ京都育ちで、何故か高校時代を父親の郷里である秋田県大館市の近郊花輪で過ごしたこと。

作品に出てくる応援歌「風蕭々と」は、剣道部のための曲であること。

「それぞれの終楽章」の前に、すでに7回も直木賞候補作品に選ばれていたこと。

クラシック音楽が好きで、趣味でチェロを弾いていたこと。

 

考えてみるまでもなく、私も「終楽章」にあることは違いない。

もう一度、じっくりと読んでみようかな。

 

 

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