ボブ・ディランの「時代は変わる」という曲は、1965年の作品である。
この年、私はまだ小学生だった。
実際にこの曲を聴いたのは、高校生になってからなので、1970年頃だ。
しかも、最初にサイモンとガーファンクルのカバー曲を知って、ボブ・ディランの原曲はその後である。
人種差別と戦う公民権運動や、泥沼化するベトナムでの戦争、そして徴兵制など、アメリカ社会は、揺れ動いていた。
原題が、「The Times They Are A-Changin’」であるこの歌は、そんな急激な社会の変化を直視しようとしない人たちに対する怒りが、その根底にあったのだろう。
日本語タイトルの「時代は変わる」は、何かの機会に、私の頭の中に浮かんでくることばだった。
先日のブログに、物心ついた頃は、米ソ冷戦の時代だったと書いた。
その冷戦が終わったのが、1989年のヤルタ会談だったという。
ブッシュ大統領とゴルバチョフ書記長により、終結宣言が出された。
そして1991年には、ソビエト連邦を解体し、15の共和国がそれぞれ独立国家となった。
そのころ、私は三人の息子を抱えて、奮闘中だった。
テレビのニュース映像を見て、ほんとにこんなことが起こるのだ、と思っていた。
「時代は変わる」ということを、実感した。
60年前に、ボブ・ディランによって書かれたこの詩を、あらためて読んでみると、感慨深いものがある。
The Times They Are A-Changin’- YouTube
The slow one now will later be fast
遅れていたものが、先頭になる。
As the present now will later be past
The order is rapidly fading
現在が過去になるように、秩序は消えていく。
And the first one now will later be last
For the times they are a-changin’
そして、先頭にいる者が、最後になる。
時代は変わっているのだから。
まるで、今のアメリカを歌っているように思える。
この数か月、時代は変わりつつある、と思わざるを得ない。
トランプ関税によって、世界の経済システムが大きく変化している。
確かに、変わったと感じたのは、何ヶ月か前のG7での出来事である。
会議の最終日に、トランプ大統領が途中で帰国した。
会場は隣国なのに、どうしたのだろうと思った。
翌日、イスラエルのイラン攻撃があった。
それが、理由だったのか、と思った。
ところが、その後いろいろ考えて、トランプ大統領が帰国した理由に思いついた。
G7という組織は、本来の共通の価値観を持っていてこそ存在できるものだ。
でも、トランプ関税を打ち出した大統領は、もう他国と同じ基盤に立ってはいない。
トランプさん自身が、そのことを自覚したから、帰国したのだろう。
会議を総括する場には、自分が居られなかった、ということなのかな。
世界を、敵にまわしてしまったのだから。
国際関係というのは、国と国との間の信頼で成り立っているものだと思う。
でも、トランプさんはそれまでの同盟国と言われる国をも敵にしてしまった。
たとえ、交渉によって一定の合意に達したとしても、それが未来にわたって保証されるものではない。
いつ、それが反故にされるかわかったものではない。
それよりも、重要なことはアメリカという国に対する信頼が失われたことだと思う。
どこの国でも、トランプのようなおかしな政治家が出現することはありうる。
でも、今回はアメリカは、おかしな大統領をコントロールできなかった。
大統領に、有効なブレーンはいなかったのだろうか。
アメリカは、世界の優秀な頭脳が集まってくる国である。
政府にも、優秀な頭脳は居るだろう。
ところが、関税によって問題を解決しようという怪しげな方法を、両刃の刃である方法を阻止できなかった。
それができなかったアメリカという国は、信頼できない国であることが明らかになってしまった。
アメリカが、他の国々から信頼を取り戻すには、長い期間が必要だと思う。
少なくとも、10年、20年の間は、できるだけ関係を避けようとするだろう。
とはいえ、世界経済の中で、アメリカの存在感は大きい。
以前、世界経済の中でのアメリカの大きさはどのくらいあるのか、世界各国の国民総生産について、調べたことがある。
いわゆる、GNPというやつであるが、確かアメリカのGNPは、世界のGNP総額の20%を越えていた。
あらためて調べてみると、GNPという指標は現在あまり使われてなくて、国民総所得GNIという指標が使われている、ということだ。
参考まで、数字を挙げると、ウィキペディアによると、2018年のデータでは次のとおりである。
アメリカ 20,636,318 中国 13,181,373 日本 5,226,599
ドイツ 3,905,322 イギリス 2,777,406 フランス 2,752,035
単位は、百万USドルとなっているので、
アメリカ 約20兆USドル 中国 約13兆USドル 日本 約5兆USドル
ということになるのだろう。
この数字は、いろんな意味で、思いがけないものだった。
なるほど、こういう状況なのだ。
たぶん、この数字は、今後10年、20年で大きく変わっていくのだろう。
先日のブログで、日本のマスコミのニュース番組では、世界経済の変化がわからないと書いた。
特に、トランプ関税が、アメリカ社会に及ぼしている影響がほとんど報道されていない。
世界は、自由貿易という方向に向かっている中で、アメリカはそれとは逆行した方法を選択した。
それはたぶん、アメリカの社会の構造が、歪んだものになってしまってることが、原因ではないのか、と思う。
経済問題には素人の私が、たどり着いたのは、そういうことである。