晴耕雨読    趣味と生活の覚書

  1953年秋田県生まれ。趣味は、山、本、音楽、PC、その他。硬化しつつある頭を柔軟にすべく、思いつくことをなんでも書いています。あわせて、江戸時代後期の紀行家菅江真澄の原文テキストを載せていきます。

郷土史や市町村史は何のためにつくるのか

どこの市町村も、市町村史編纂事業というものをやっている。

郷土史と言われることも、あると思う。

もっと範囲を広げると、都道府県史というものになり、全体として自治体史などとも呼ばれている。

自治体にとって、過去にどのような経過を経て現在にいたったかということは、これから将来どのよう進んでいくべきかを考える際に、とても重要な資料となるということだと思う。

 

私の住む柏市は、すでに平成7年から平成12年までに、全3巻の「柏市史」を刊行している。

 「原始・古代・中世編」、「近世編」、「近代編」からなり、それぞれ1000ページを越える大部であり、販売価格も5000円前後である。

とても、個人で購入するようなものではない。

柏市は、平成17年に沼南町と合併した。

沼南町も、昭和54年に「沼南町史」を刊行している。

合併を受けて、「柏市史編さん委員会」を柏市教育委員会文化課に設けている。

その基本方針の中で、次のように述べている。

 

『収集した歴史資料は本市及び市民の共有財産であり,本市を理解しよりよい 「まちづくり」の基本資料として保存管理し,活用していく。』

 

 大きな目的は、歴史資料を収集して散逸を防ぐことや、これらの歴史資料を市民みんなで共有することにより、自分たちの街について知り、街の未来を考えるときに役立てようということだと思う。

 

柏市の市史の場合だと、先に述べたように分厚い書籍が、3冊で合計3000ページを越えるものである。

市町村の規模などにもよると思うが、だいたいは似たようなものだろう。

基本的には、紙に印刷した書籍として完成させ、保存しているのがほとんどである。

多くの編纂委員が、長い日数を費やして、会議を重ね、原稿を書き、検討して、完成させたものだと思う。

そのほとんどは、市立図書館をはじめ、柏市の施設、そして他の自治体の図書館などにも寄贈されるのだろう。

 

全国の市町村や都道府県について、ネットで調べてみると刊行した書籍について紹介してあるサイトは、どこでも設けている。

だいたいは、単に書籍の概要や目次くらいについて述べてあるだけである。

ところが稀に、自治体史の書籍の内容そのものを、サイトに掲載してある場合がある。

それは、刊行した書籍の内容をPDFファイルにして、掲載してる例が多い。

閲覧者の都合を考慮して、Flash版やHTML版など電子書籍を用意しているサイトもあった。

自治体が、都市部だからとか、政令指定都市だからとか、そういうものはほとんど関係ないようである。

自治体が、住民と情報を共有しようとしている姿勢があるか、そうでないかとういうことだと思われる。

私が、見つけたいくつかのサイトから、すぐれていると思われるいくつかのサイトについて、紹介したい。

 

www.city.misawa.lg.jp

 

www.city.noboribetsu.lg.jp

 

www.city.nara.lg.jp

 

www.city.susono.shizuoka.jp

 

www.library.city.takatsuki.osaka.jp

kameyamarekihaku.jp

 

www.lib.fussa.tokyo.jp

数千ぺージに及ぶ素晴らしい自治体史を、だいたいは数百部から数千部を刊行する。

ほとんどは、図書館の蔵書となる。

そのような立派な書籍は、館内の閲覧だけ認められていて、貸し出しは認められてないことが多い。

詳しく調べてみたい場合には、何日も図書館に通わなければならない。

そんな暇な人は、なかなかいない。

自治体のサイトに自治体史があれば、いつでも誰でもどこからでも、アクセスすることができる。

 

かつては、書籍を作ろうとしたら、執筆者が原稿用紙に書いて、それを印刷所で和文タイプライターや、ワープロで印刷のための準備をしていた。

しかし、今は執筆者自体が、PCで入力している。

すでに、自治体史という書籍ができる前に、電子データができているのである。

自治体のサイトに掲載するために、特別な準備は要らない。

必要なのは、住民と情報を共有するという姿勢だけである。

 

平成の大合併前には、3200ほどあった市町村が、1700に減少してしまったそうだ。

ということは、合併した市町村は市町村史を作りなおしたことだろう。

いや、まだ進行中かも知れない。

市町村史を何のために作るのか。

それを、しっかり踏まえてほしいと思う。

資料を収集し、管理保存する、そして活用する。

最後の、「活用する」が大事なのだ。

それを考えれば、立派な書籍を作ればいいということではない。

どのようなものができているのか、それをどう活用しようとしているのか、知りたいと思う。

 

 

seiko-udoku.hatenadiary.jp

seiko-udoku.hatenadiary.jp