晴耕雨読    趣味と生活の覚書

  1953年秋田県生まれ。趣味は、山、本、音楽、PC、その他。硬化しつつある頭を柔軟にすべく、思いつくことをなんでも書いています。あわせて、江戸時代後期の紀行家菅江真澄の原文テキストを載せていきます。

菅江真澄

はしわのわかば④ 菅江真澄テキスト

十日 けふもさるがう舞あり。 こよひまた一夜なンどあれど、風なぎたれば、此あたりの花のちり残るも見まほしく、また春のころ見し逹谷(タツコク)ノ窟(イハヤ)、桜原といふ処は名さへおもしろければ、ふたゝびとて平泉を出たつ。 むかし悪路王ひそかに都…

はしわのわかば③ 菅江真澄テキスト

八日 つとめて、里の童を道あないとして、きのふの路をいさゝか分て、大金(オホガネ)といふ処の岨に、桜の二三本(フタモトミモト)たてるが朝風に吹さそふをうち見やり彳めば、童の小河に臨(ノゾミ)てものうかがふさま、何ならむとおもへば石斑魚(カジ…

はしわのわかば② 菅江真澄テキスト

六日 よむべの雨もなごりなう晴て、花かあらぬか、山のはごとにかゝる白雲いとふかし。 松井といふ処におもしろき飛泉(タキ)あり、けふはその滝見なむ、いざたまへとあるじ芳賀慶明のいへれば、やをらこゝを出たち、うちかたらひゆけば山吹が柵といふあり…

菅江真澄の旅日記

菅江真澄の旅日記のテキストを校正している。 菅江真澄全集十二巻のうち、日記の部分は、第一巻から第四巻までである。 数年前に、全集の原文をスキャナーで画像ファイル化して、更にOCRでテキストに変換した。 オンラインで、OCR変換してくれるサイトを使っ…

柳田国男と菅江真澄

菅江真澄は、それほど知られている人ではない。 私の学校生活の中でも、彼の名や作品は教科書などでは扱われていなかった。 現在は、どうなのだろうか。 だから私は、二十代になって,菅江真澄の研究者である内田武志氏の新聞記事を読むまでは、その名を知ら…

かすむこまかた11 菅江真澄テキスト

近隣(チカドナリ)の翁の訪来(トイキ)て、都は花の真盛(マサカリ)ならむ、一とせ京都(ミヤコ)の春にあひて、嵐の山の花をきのふけふ見し事あり、何事も花のみやこ也とて去ぬ。 数多杵(アマタギネ)てふものして餅搗(モチツキ)ざわめきわたりぬ。 …

かすむこまかた10 菅江真澄テキスト

廿八日 毛越寺のふる蹟見なんとて田の畔づたひして、礎の跡なンどにいにしへをしのぶ。 廿八日 毛越寺の衆徒某二人、日吉(ヒエ)ノ山に登り戒檀ふみにとて旅立ければ、此法師たちに、故郷に書(フミ)たのむとて、 ふる里を夢にしのぶのすり衣おもひみだれ…

かすむこまかた⑨ 菅江真澄テキスト

「是はもろこしのごかん(後漢)のめいてい(明帝)の御代に、かぶむと申ス老人にてさふらふ也」 と老翁(オヂ)、老嫗(ウバ)両人(フタリ)出(デ)て、己(オノ)がむすめの死(ミマカリ)し事をなげき、塚にをみなへし、おしこぐさの生たるを記念(カタミ)…

かすむこまかた⑧ 菅江真澄テキスト

此事終(ハツ)れば、れいの優婆塞出(イデ)キて法螺を吹キ太鼓(ツヾミ)うてば、もろ/\の神供(ヒモロギ)をおろし、円居(マドヰ)しける衆徒(ホフシ)の前に居(スヱ)るをいなだき、神酒(ミキ)たうばりなンど、やゝ此直会(ナホライ)はてて、衆…

かすむこまかた⑦ 菅江真澄テキスト

「忠衡密渡蝦夷ニ」といふくだりに 「其夜泉三郎忠衡は、郎徒共に暫く防キ矢を射させて後は館に火をかけ、自害の体にもてなし裏道より遁れ出て終蝦夷にこゝろざし、津軽ノ深浦へとぞ落行ける。 頃は六月廿日余り、深浦の港は兼て秋田ノ次郎が謀ひにて、交易…

かすむこまかた⑥  菅江真澄テキスト

また康元、正嘉のころならむ、相模守時頼、最明寺して落飾(スケシ)たまひて、法ノ名を覚了房道崇と号(ナノリ)て国々めぐり給ひ、こゝにもしばし杖を曳(ヒキ)とめられしといふ庵の跡あり。 また舞鶴(マヒヅル)が池も雪に翅(ツバサ)のふり埋れ、梵字…

かすむこまかた⑤  菅江真澄テキスト

四月(ウヅキ)ノ初午ノ日は白山神の祭にて、七歳男子(ナナツゴ)を馬に乗(ノセ)て粧ひたて、白兎(シロウサギ)の作り物あり。 此白兎は従者(スンザ)にてもろこしより神のぐし給ひしまねびといへり。 此処(コゝ)に斎奉(イツキマツ)る白山ノ神霊(…

かすむこまかた④  菅江真澄テキスト

二十日 けふは磐井ノ郡平泉ノ郷(サト)なる常行堂に摩多羅神の祭見ンとて、宿の良道なンどにいざなはれて徳岡の上野を出て、はや外(ト)は春めきたりなンど語らひもて行ク。 遠かたの田ノ面の雪の中にこゝらたてならべたる鶴形(ツルガタ)は、まことにあ…

かすむこまかた③  菅江真澄テキスト

白粉(シロイモ)の、さはにあらねば、近き世には山より白土(シラツチ)を掘り来(キ)て、三四日(ミカヨカ)も前日(サキツヒ)より、花白物(オシロイ)よ/\と肆(イチ)にうりもてありくを買ひ、水に解(トカシ)たくはひおきて是を塗(ヌ)る也。 む…

かすむこまかた②  菅江真澄テキスト

十二日 つとめて、小雪ふりていと寒し。 午うち過るころより若男等(ワカヲラ)あまた、肩(カタ)と腰とに「けんだい」とて、稲藁(ワラ)もて編(アメ)る蓑衣(ミノ)の如なるものを着(キ)て藁笠(ワラガサ)をかヾふり、さゝやかなる鳴子いくつも胸(ム…

かすむこまかた①  菅江真澄テキスト

夕づゝのかゆきかくゆきゆきくさまくら旅にしあればそことさだめず 雲ばなれ遠き国方(クニベ)にさそらへありき、ことしもくれて、みちのくの胆沢(イサワ)ノ郡駒形(コマガタ)ノ荘(サウ)ころもが関のこなた、徳岡(トクオカ)(胆沢郡胆沢村)という里…

かすむこまかた  菅江真澄テキスト

「かすむこまかた」は、天明6年(1786年)正月から2月にかけての日記である。 菅江真澄は、陸奥国仙台領胆沢郡前沢駒形で正月を迎えている。 天明3年春に、故郷の三河を離れて旅に出た菅江真澄にとっては、旅の途上の三回目の正月である。 天明4年は、信濃国東…

けふのせはのゝ⑦ 菅江真澄テキスト

廿八日 あるじにいざなはれて、阿部(安倍)のふる館のあと見にとて行ぬ。 加志といふ処に、黒沢尻四郎政任のありしいにしへを偲ぶ。 北上河をへだてて、国見山のいとよく見やられたり。 国見てふ名はところ/″\に聞えたり。 神武の帝八十梟を国見丘に撃給ふ…

けふのせはのゝ⑥ 菅江真澄テキスト

十日大瀬河(石鳥谷町)といふに土橋かけたるを渡る。 この流は藤原朝臣盛方の、 「ほどもなくながれぞとまる逢瀬河かはるこゝろやゐせきなるらん」 とながめ給ひしは、これと、もはらいへり。 八幡(ヤハタ)(石鳥谷町)を過て宮部(花巻市)をくれば、花巻とい…

けふのせはのゝ⑤ 菅江真澄テキスト

八日つとめて寺林(岩手郡玉山村)、河口(岩手町)をへて、巻堀(玉山村)といふ村に斎ふ金勢大明神といふかん籬あり。 こは名にたかふ、石の雄元の形あまた祠にをさめたるはいかにととふに、近きころ盗人とりうせたるを、もとめいだし奉りてのちは、此里のこと処…

けふのせはのゝ④ 菅江真澄テキスト

五日 とのしらみゆけば、女戸おし明て、こは水霜〔露をしかいふなり〕しろ霜まじりふりたりとて、真柴折くべ物にるにあたりて、出たつよそひす。 けふは末の松山見にいかんとおもひて、とく/\と出ぬ。 梨木坂のこなたよりは二戸郡といへり。 保登(戸)沢…

けふのせはのゝ③ 菅江真澄テキスト

二日 朝たつ。 をりしも恵音ほつし(法師)、とよりさしのぞき、又いつかなどいへるに、 昨日来てけふの細布たちさらばむねのひがたき別ならまし とて、やを出て、小豆沢村(鹿角郡八幡平村)になれば、いかめしき大日如来の堂あり。 そのゆへは、そのかみ田…

けふのせはのゝ② 菅江真澄テキスト

鶴田村(花輪町)の辺になみだ河といふめるは、あはぬ夜毎/\を根み、ながるゝなみだの顔をあらひたるより川の名におへりとも、又いつまで世にすみありつとも、あがおもふ女を見ることこそかたからめとや思ひけん、深き林に入て此男くびれ死けり。 又、その…

けふのせはのゝ① 菅江真澄テキスト

天明五年(一七五八)の秋、つがろじをへて南陪の鹿角郡になりて錦木のむかしを尋ね、岩手郡、和賀郡を過て仙台路にかゝり、江刺郡に片岡邑に宿りたるまでをかいのせたり。 其言葉みじかういひもたらされば、《けふのせはのゝ》と名づく。 (天明五年―一七八…

紙の本とデジタルの本②

私にとって何度目かの「電子書籍ブーム」が訪れている。 今までため込んでいた歴史書や古典文学などのテキストを、パソコンやタブレットで読めるように、電子書籍に変換している。 きっかけは、「吾妻鏡」である。 このブログに、「令制国」のことを書いてい…

けふのせはのゝ 菅江真澄テキスト

津軽から矢立峠を越えて、秋田藩に入り大館の街を通り、山中の沢尻という宿で、「そとがはまかぜ」の日記は終わっている。 大館は、私の郷里であるが、天明5年(1785年)というから250年も前に、菅江真澄が通り過ぎたと思うと、感慨深いものがある。 大館は、…

そとがはまかぜ⑥ 菅江真澄テキスト

廿二日 あさとく、せきて(関手形)わたして越たり。 このあたりの郡はいかにととへど、しらじ、たヾ白河庄とのみいらふ。 みちの左右に白糸滝、登滝、無音滝、日暮し滝、二見滝、折橋の番処を右の沢へおりて温泉あり、鬼湯なり、大人の入湯の故事。 銀山あ…

紙の本とデジタルの本①

どうしても読みたい本があったので、図書館で借りることにした。 自宅の近所に柏市の図書館の分館はあるが、分館の蔵書にはないようなので、本館まで出かけることにする。 本館までは、歩けば1時間ほどなので、運動にはちょうどいいのだが、自転車で出かける…

そとがはまかぜ④ 菅江真澄テキスト

十六日 あるじ行徳の云、みちのこゝろは露も思ひはなれずよなど、まめやがに聞えて、 立帰る雲措は遠く隔ともこゝろを渡せ天のうきはし 寄るなみのたち帰るも絶ずたゞ三河の水の音信てまし となんありける、ふたくさの返し。 雲井路をたちへだつとも忘れずよ…

菅江真澄の文章

私の手元にある「菅江真澄全集」は、1981年に「未来社」が刊行したもので、第三刷である。 しかし、第一刷は1971年に出ている。 奥付を見ると、第一巻の定価は6500円であり、全巻十四巻を揃えるといい金額になった。 菅江真澄は、それほど知られた人物ではな…