NHKのテレビ番組「日本人のおなまえ」が、3月末で終了した。
姓氏や地名などにとても興味がある私は、楽しみにしていた番組だったので残念である。
レギュラー化してから、5年になるらしいが、そのうちに再開しないものだろうか。
おなまえと言っても、姓名のように、「姓」と「名」から成っている。
この番組は、主に「姓」つまり苗字・名字を取り上げていた。
姓氏ということもあるが、「姓」(かばね)や氏(うじ)となると、厳密に歴史的に調べると難しくなってしまいそうだ。
日本には、30万もの苗字があるらしいし、いろんな切り口で問題を扱うことができるだろうから、いくらでも番組は作れそうである。
先日、「アルビノーニとボッケリーニ」という記事を書いた時に、欧米のなまえはキリスト教の浸透によって、聖人にちなんだものが多いらしいので、ヘブライ語由来のなまえをを調べたらおもしろいだろうと書いた。
旧約聖書や新約聖書は、本来ヘブライ語で書かれていただろうから、そこに登場する者たちの名前もヘブライ語だろうと思ったのである。
ここで言う名前は、苗字のようなファミリーネームではなく、ファーストネームといわれる「個人名」である。
そこで、ヘブライ語由来の名前についてのサイトを調べてみた。
そしたら、「ヘブライの仮庵」というサイトの中に、「ヘブライ語が起源の名前一覧」というページがあった。
このページのリストには、ヨーロッパで使われているヘブライ語由来のなまえが、アルファベット順に並んでいる。
数えてみたら、80種類ほどあった。
中には見たことのないものもあるが、ほとんどは見かけたことがあるものである。
そして、半分くらいはかなり使われていて有名な人もいる。
80種類というのは、なまえ全体ではたいしたことのない割合だが、実際に使われている割合はけっこう高いのではないだろうか。
このリストから、いくつかあげてみる。
Ann(アン)、Anna(アンナ)、Anne(アンヌ、アンネ)
ヘブライ語のChannah (ハンナー)より「慈しみ」の意味があるらしい。
聖母マリアの母のなまえ。
これから派生した愛称形に、次のものがある。
Anita(アニタ、アニータ)
Anette(アネッテ、アネット)
Annie(アニー)
Nancy(ナンシー)
アンネというと「アンネの日記」ですが、彼女はユダヤ系ドイツ人でした。
Daniel(ダニエル)
ヘブライ語のDaniyyel (ダーニイェール)より、「神は私の裁き主」。
Dan(ダン)は、愛称形、Dana(ダナ)は女性形。
私の学生時代、ダニエル・ビダルというフランスの女性歌手がいて、何回も来日していました。
ダニエルは、女性にも使うのだな。
David(デービッド、ダヴィド、ダビデ)
ヘブライ語のDawid (ダーヴィード)より、「愛される者」。
古代イスラエル王国の王様の名前。
デビッドといったら、私にとってはデビッド・ボウィです。
むかし、モンキーズのメンバーにデイビィ・ジョーンズ(Davy Jones)という人がいたけど、DavyというのもDavidの愛称形なのだろうか。
Elizabeth, Elisabeth(エリザベス)
ヘブライ語、'Elisheva` (エリシェヴァ)より、「私の神は豊穣」。
派生形として。
Eliza(エライザ)
Elisa(エリサ、エリーザ、エルザ)
Elise(エリーゼ)
Betty(ベティ)
Lisa(リサ)
Liza(ライザ)
誰でも知ってるエリザベスは、やっぱりエリザベス女王でしょう。
正式な名前は、エリザベス・アレクサンドラ・メアリー・オブ・ウインザーなのだそうです。
姓と名前の間に、オブ(of)が入るのは高貴な人であるということなのだろう。
「キラキラネーム」ということばがある。
ネガティヴな意味で使われることが、多いような気がする。
私は、ポジティブな意味も与えてもいいと思う。
法的な制約の多いファミリーネームに比べて、ファーストネームと呼ばれる個人名は、命名する親に任されている。
子どもに対する親の希望や夢が込められていると言える。
そういう意味では、聖書にある異国の名前をこどもに命名したのは、キラキラネームに通じるものがあるのではないだろうか。
インターネットで世界中がつながってしまった現代では、名前の世界も国境がなくなって行くのではないかな。