晴耕雨読    趣味と生活の覚書

  1953年秋田県生まれ。趣味は、山、本、音楽、PC、その他。硬化しつつある頭を柔軟にすべく、思いつくことをなんでも書いています。あわせて、江戸時代後期の紀行家菅江真澄の原文テキストを載せていきます。

旅をする人たち

旅や旅行というのは、見物・保養・調査などの目的のために、居所を離れてよそのよその土地へ行くこと、だそうだ。

辞書によっては、「ひととき」とか「一時的に」という言葉が入っているものもある。

 つまり、一定の居所があることが前提で、そこを離れてよそに出かけてまた居所にもどってくることが、旅や旅行であるといえる。

それでは、定まった居所がなく、またはそこへ戻ってくるつもりもないような場合は、なんというのはだろうか。

 

元禄2年(1689年)、松尾芭蕉は「奥の細道」の旅に出る。

西行や能因らの歌枕や名所旧跡をたどり、下野、陸奥、出羽、越後、加賀、越前など彼にとって未知の国を巡った。

全行程約600里(2400km)、日数約150日の大旅行である。

すでに、芭蕉は「野ざらし紀行」の旅で、東海道を西に向かい、伊賀、大和、吉野、山代、美濃、尾張、甲斐をまわり、さらに木曽、甲斐を経て江戸に戻っている。

伊勢神宮参拝や、明石、吉野への旅は「笈の小文」としてまとめられ、江戸への復路は「更科紀行」となった。

奥の細道」は、その延長上にあるといえる。

旅には、門人の河合曾良を同行させており、江戸へ戻ることを前提としており、それまでの旅と同様に、紀行文を著作するための旅であった。

 

天明3年(1783年)、菅江真澄は故郷三河を離れている。

この時点で、この旅がどの程度の期間になると、考えていたのだろうか。

信濃  1783年5月〜1784年7月   1年3月

越後  1784年7月〜9月       3月    

庄内  1784年9月         1月    

秋田  1784年9月〜1785年8月     11月

津軽  1785年8月〜10月      3月

陸奥  1785年10月〜1788年6月  2年9月

津軽  1788年6月〜7月        2月

蝦夷地 1788年7月〜1792年10月 4年4月

下北      1792年10月〜1795年3月 2年6月

津軽  1795年3月〜1801年11月 6年5月

秋田    1801年11月〜1829年7月 27年9月

それぞれの、土地での滞在期間を概算してみた。

こうしてみると、長く滞在してるのは、信濃の1年2月、陸奥2年10月、蝦夷地4年3月、下北2年5月、津軽(3回目)6年8月である。

40代後半に秋田に再度来て定住し、合計28年10月となる。

真澄は、それぞれの土地で知人宅に寄留し、自分だけのための住居を確保しようとした形跡はない。

長期的な計画を持っていたようには思えず、その時その時の事情で、住む場所や移動先を考えていたように思われる。

 一定の住居や生業がなく、諸方をさまよい歩くことを、「漂泊」という。(精選版日本国語大辞典)

帰るべき住処のあった芭蕉は旅人であり、いつも仮の宿にあった真澄は漂泊の人と、言うべきであろうか。

 

住居があるが、それがなかなか定まらず、住居が転々とすることは何と言うのだろうか。

私は、住居が転々としていた時期がある。

高校生くらいから、就職後現在の住居に移るまでの、十数年間である。

今までの、住所を数えてみたら、10箇所もあった。

思ったより多くて、自分でも驚いてしまった。

順番に、数えてみた。

1  秋田 生まれ育った村   15年

2  秋田 大館市の親戚宅に下宿   3月

3  秋田 大館市街       3年弱

4  横浜 港北区日吉      1年

5  横浜 港北区綱島      3年

6  千葉 我孫子市       1年半

7  千葉 柏市         1年半

8  千葉 松戸市東平賀     5年

9  千葉 松戸市牧の原     2年半

10 千葉 柏市        36年

あらためて見てみると、自分のことながら、なんだかふらふらしてたんだなと思う。

 

就職の時点では、秋田へのJターンも考えて受験していたので、結果次第ではどうなっていたかわからない。

合格して、秋田に帰っていたらその後は、大きく違っていたはずである。

そんなに、先のことを深く考えていたわけではない。

その都度その都度、できることをやっていたら、結果的にこうなってしまっただけである。

人間のやることは、だいたいこんなものなんだろう。

 

 

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