柏の葉公園のあたりを、車で走っていた。
柏の葉公園のある地域は、アメリカ軍の通信基地があった所で、1981年に返還された跡地である。
千葉県営の柏の葉公園の他に、公共の施設が数多く建設されている。
東京大学柏キャンパス、千葉大学柏キャンパス、柏の葉高校、十余二小学校などの文教施設。
税関分析研究所、税関研修場、科学警察研究所、第三機動隊といった具合である。
そして、「国立がん研究センター」がある。
この施設の看板をみて、ひらめいたことがある。
日本語は、3種類の文字で表記されているという文章を見たばかりだったからだ。
漢字+カタカナ+ひらがな である。
なるほど、「国立がん研究センター」は、漢字(2字)+ひらがな(2字)+漢字(2字)+カタカナ(4字)からできている。
「がん」ということばは、「癌」という漢字でも表記できるのに、ひらがなを使っているのはなぜだろう。
「癌」という漢字のインパクトが強すぎるので、ひらがななのかな。
「センター」は、外来語なので、カタカナ表記なのだろうが、強いて漢字でも表すとしたら、どうなるのだろう。
中央とか、中心的役割をする機関のことを言うらしい。
「国立癌研究本部」とでもなるのだろうが、たしかに硬すぎる。
正確には、この施設は「国立がん研究センター東病院」らしい。
「中央病院」は、東京の築地にあるとのことだ。
日本語では、漢字だけではなく、カタカナとひらがなをつくり出したことにより、日本語の表記をわかりやすくしている。
漢字についても、音読みをカタカナで、訓読みをひらがなで表記したりしている。
音読みは外来語であり、訓読みが大和言葉つまり本来の日本語と考えられる。
音読みも伝えられた時代によって、呉音、漢音、唐音、明音とあるのだな。
カタカナとひらがながなくて、漢字だけだったらどうなっていただろうと考えると、なかなか難しい。
万葉仮名の世界だな。
反対に、漢字がなくて、カタカナとひらがなだったら、ということも考えられる。
そんなことを考えていたら、日本と同じように、漢字を自国語の表記に用いていた国である、ベトナムと朝鮮のことを思いついた。
日本と同様に、自国語のための文字を持っていなかったので、公式文書は漢字を使っていた。
日本は、800年頃にカタカナを、900年頃にひらがなを考え出した。
それによって、漢字、カタカナ、ひらがなを用いて日本語を表記するようになった。
ベトナムは、15世紀頃にはベトナム語を表記するための文字「チュ・ノム」を作り漢字と併用したが、あまり一般的には普及しなかったらしい。
17世紀に、キリスト教の布教やフランスによる植民地時代を経て、ラテン語アルファベット表記を使うアンナム語(安南)語が、作られて公用語とされた。
それによって、公式には漢字が使われないようになった。
朝鮮でも、15世紀に朝鮮語を表記するための表音文字が作られ、「ハングル」と呼ばれた。
韓国においても、北朝鮮においても、公文書においては、ハングルの使用に限定された。
しかし、韓国においては、当分のあいだ漢字の使用を認めたために、漢字が併用された経緯があり、使用は限定したものになっている。
他の2国は、漢字を捨てたのに、なぜ日本は漢字を抱え込んだままなのだろうと、考えてみた。
やはり、識字率の高低が大きいのでは、ないだろうか。
日本では、識字率があまりにも高すぎたので、漢字を捨てることができない、漢字を捨てる必要がなかった。
識字率が、ベトナムや朝鮮のようにわずか数パーセントならば、漢字は捨てて、ひらがなとカタカナだけ教えればいい。
ただ、日本語のように母音が少なく、声調もないと、同音異義語がやたらと多くて、困難である、のは確かだろう。
私は、ことばとか名前とかがとても気になってしまう性分で、引っかかってしまうと気になって、いろいろしらべてしまう。
私が、中学生、高校生だった頃に、ベトナム戦争のニュースがいつも流れていた。
その頃の、北ベトナムの英雄は、ホー・チ・ミンで、南ベトナムの大統領はグエン・バン・チュー、副大統領は、グエン・カ・オキだった。
ベトナム人の名前は、どうも漢字名が元になってるらしいことを知った。
ホー・チ・ミンは胡志明、グエン・バン・チューは阮文紹、グエン・カ・オキは阮高奇だった。
ベトナムの国名自体、越南国からきている。
後年、「三国志演義」を読んでいたら、諸葛孔明が越南国に何度も遠征していた。
遠征した時は、服従するが、引きあげてしまうと、また元にもどってしまうという、その頃からしたたかな国だった。
韓国の大統領で、私が最初に知ったのは朴正煕大統領であるが、パク・チョンヒという発音は知らなかった。
日本では、「ボク・セイキ」と読んでいた。
その後、日本のマスコミなどは、大統領名を漢字で表記するが、韓国の発音で伝えることが多くなったように思う。
盧泰愚(ノ・テウ)、金泳三(キム・ヨンサム)、金大中(キム・デジュン)といった具合で、韓国語読み、日本語読みの両方で知られているような気がする。
ベトナムも韓国も、漢字を公用語から外すようになって、長い期間が経っている。
しかし、氏名という基本的なものなのに、どうしていまだに漢字から離れることができないでいるのだろう。
現在のところ、漢字を自国語に公式に使用しているのは、日本と中華人民共和国と中華民国の3カ国になるのだろう。
同じ漢字といっても、それぞれに使っている漢字は違っている。
日本では、第二次世界大戦後に漢字の字体整理を行い、従来の活字字体と異なった簡易字体である「新字体」を定め、従来の字体を「旧字体」とした。
「簡易字体」は、「当用漢字字体表」に約500字が示されている。
中華人民共和国が制定した従来の漢字を簡略化した字体体系は、簡体字といわれる。
「簡化字総表」には、2235字掲載されている。
中華民国においては、簡略化していない従来の漢字、いわゆる繁体字がそのまま使われている。
日本における「旧字体」に近いが、おなじではないらしい。
戦前において、すでに活字体に違いがあったようだ。
今はコンピュータの時代なので、どんな漢字でも表示しようとすればできるだろう。
字を字形によって分類した辞書は、中国においてずっと作られてきたらしい。
清の「康熙字典」では、214部首4万9000字あまりとなっている。
でも、コンピュータの世界では、unicode13.0では、9万2856字であり、日本のフォントアプリ「今昔文字鏡」には、なんと17万字以上収録している。
中華人民共和国でも、簡体字を繁体字に戻そうという動きもあるらしい。
過去の遺産を読むことができないのだから、そうせざるを得ないかもしれない。
話が、どんどん外れてしまった。
初めに書いた、癌とがんのことであるが、医療の世界ではこの二つは同じではないとのことだ。
癌は、「上皮性の悪性腫瘍」のことである。
がんには、さらに肉腫と言われる「非上皮性の悪性腫瘍」と白血病や悪性リンパ腫などの「血液のがん」が含まれるとのことです。