晴耕雨読    趣味と生活の覚書

  1953年秋田県生まれ。趣味は、山、本、音楽、PC、その他。硬化しつつある頭を柔軟にすべく、思いつくことをなんでも書いています。あわせて、江戸時代後期の紀行家菅江真澄の原文テキストを載せていきます。

ゆきのいさわべ②  菅江真澄テキスト

廿一日 猶をなじところにくれたり。

廿二日 盛方とゝもに徳岡(胆沢郡胆沢村)にいかんとて野はらのみちにいづれば、こまがたの山しろう雪のふりそめたるをはる/″\と見やりて、あないみじや、きのふさえたるげにやあらんなどかたりつゝとなふ。

 

   きのふみしゆきげの雲やそれならんをちのたかねにはだれふる也

 

廿三日 良知のやを出て、もりまさにわかれたり。

枯木立ふかくしげるかたそばのみちは、くち葉にあとなく埋みはてたるに、うたひごちて柴おふたる男来けり。

 

   柴人のみねより谷にくだるらしわくるおち葉の音ぞちかづく

 

しらつる、まづる、かり、あしかも、しら鳥など、のら、田づらに見やられたり。

此としはたづいと多く来て、あまたとりてんなどかたれり。
このころのことにやありけむ、大なるつるふたつ火矢にいられたるが、笹の葉をかんで、やぶられたるつばさのきずいやさんとて、くぼたの中にかくろひたるを、たがやしの翁見つけて、おふこふりたておひめぐりて二ながらとらへたれど、あし手に觜にくはれぬとか。
つるはけうの鳥にて、此形にまよひてくだるを、まつとやよりいころす。
此おとにおぢても、あが友をしたひてたちもはなれず、あるかぎりみなころされ侍るなど、かりうどのいへり。
かくて水沢をへて、やはた村(水沢市)につく。
加美川の面にちいさき舟をめぐらしありくは、鮭の子うみはてゝ死うかびながれくるをひろふとて、やすといひけるもの手毎持て、みなそこをのみ見つゝ行がいと多し。
こは、去年のけふしころまうで奉りしを、今ふたゝび此ひろまへにいたり奉ることのうれしく、ぬかづきて、

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こよひは、畑中なにがしのかりにとまる。

廿四日 あるじにいざなはれて水沢に出て、のぶかぬ(信包)のやをとぶらふ。
あるじ、いと久しうありしなどかたらひて、くだものとともに題さぐらせんとて持出て、からうた、やまとうたせり。
わがとりえたるは枯野朝といふことを、

 

   かれはつるをばなが袖に此あさけはらはぬ霜の見えてさむけし

 

日山にかくろひはてゝ此やどをたちて、良道がありかもとめんとて野みち山みち、家居なきかたをはる/″\と、あか星の光をしるべにてたどる。
すみかやあらん、火のかげの見えし方をさして、あなうれしときつきたれば、芥にかゝりたる火にこそありけれ。

 

   行くれし宿のたつ木にとひよればこはあくた火のかげにぞありける

 

いとくらき林のあはひより、ゆくれなふうたうたふ男出たれば、これをあなひに、からうじてそのかどにいりぬ。

廿五日 前沢に出て盛方をとぶらへば、こよひはとヾまりてなど、せちにものし聞ゆればをれり。

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かくありけるかへし。

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廿六日 をなじ里なる正保がやをとぶらひて、かたらふうちにくれぬ。

廿七日 あけなば又、なにがしのみてらにてあひなんといひて正保云、

 

   あすは又あはんなごりもかなしきにとをきわかれをおもひやれきみ

 

となん聞えし歌のかへしをす。

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朝とく衣川に来りて、西行上人むかし此あたりにたゝずみて、

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かくなんのたまひけるも、いましころにやあらんなどひとりごたれて、此土橋を過るに、うすらひにふたがりたる水の面にくち葉ちりて、霜いとふかし。

 

   衣川みぎはにむすぶひもかヾみ冬の日数やかさねきぬらん

 

廿八日 十二月、秀衡のあそ(朝臣)六百年のいみにあたり給ふを此日ものし給ふとて、人々中尊寺にまうでければ、朝とく山の目を出て此御寺に入ぬ。
知足院のみほとけの御前にいたれば、しら布のかへしろかけて、こなたのひろびさしに、さるがうすべきまうけしたり。
みほとけのかたはらにはこゝらの人あつまりて、けふの手向のから歌、やまとうた奉るとて、冬懐旧といふことをうたふ。

 

   埋れぬ名のみばかりはあらはれてゆきにあとなきむかしをぞおもふ

 

あまたのまうづる男女、こはいにしへ、いでは、みちのおくのくにをまつこちて、しら河のせきより、そとがはま(津軽)に行べきみち/\に、そとばをさして、此みてらはなかばにあたれるとて、いたくあがめ給しなど、此きみの、あはれいにし也けるよとてなみだながしぬ。

やがて笛ふきつヾみならして、さるがう三たびかなでてはてぬれば、日くれぬとていそぎいでぬ。

火わたし、猫がさわてふ処もいとくらくて、白華子、信包、正保など清古のやに来けり。

此タ、からうたいふとて、あれも楽といふ文字をさぐりえて、

 

   おもふどちふなよそひして見しゆめのたぐひやなみのよるのたのしさ

 

廿九日 白華子たふれて、やのあげまきなる清儀に、くしおくりける文字のすゑなる花といふことを見て、きよゝしにかはりて、

 

   めづらしな名におふはるの光とて人のことばににほふはつはな

 

午ひとつ斗に、はしわの社にまうでたり。

三十日 白華子、正保にいざなはれて、いざはにおもむきて、こよひは前沢にいねたり。
うるふかんな月一日 をなじ里なる、せきてふ処にいたりて雨やどりすとて、高尚のやに入てとまる。
あるじのいはく、

 

   草も木も冬かれはつるやまざとをたづね来にける人ぞうれしき

 

といひ出たるにかへし。

 

   とひよればこゝろにかなふまどゐして冬も人めのかれぬやまざと

 

雨はいたくふるに、人よびの岡にやあらん、めぐらし貝といふものを吹すさみて、こぶれといふ男をよびて、おほやけの仰をとてふみわたしてやる。
又風吹そへて、なる神すれば、桑のかれ枝をとりかざして明たり。

 

 

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