晴耕雨読    趣味と生活の覚書

  1953年秋田県生まれ。趣味は、山、本、音楽、PC、その他。硬化しつつある頭を柔軟にすべく、思いつくことをなんでも書いています。あわせて、江戸時代後期の紀行家菅江真澄の原文テキストを載せていきます。

ゆきのいさわべ③  菅江真澄テキスト

二日ひるはれて猶風とく吹ぬ。

三日 こゝを出て常雄のやにくるみちのなかに、わらふだしきて、みてぐら、みところにさしたるは、ものゝけある人を、けんざ(験者)のいのりて、かく、ちまたにまつる、みちきりといふもの也。
かくて其やにいたる。

四日 あるじとかたらひ、けふもゆふぐれになりぬ。

五日 きのふにひとし。

六日 けふ雪ふりそめて、ひんがし山、をさへ山真白にみゆれど、ゆきかふくつのはな埋みもはてず。

 

   ふみしだきつゆはむとりもこゝろせよけふをはつかにつもるしらゆき

 

七日 ゆふつげ行ころなへ(地震)したり。

八日 あるかたにゆくよめとて、人々のゝしりて見たるを見れば、ふとくたくましき馬に、いみじきよはひして、なりかねといふものこゝらうちふりてちかづき来けり。
此女、にびいろのきぬて、さかさ袴に菅がさかつき、をとなしやかにのりたる。

先にたちたる男ら、あぶらさゝえ、なにくれの此調度もち行てけり。
かゝることは、さと/\のならはしあれど、凡かゝるべくなん聞えたり。

九日

十日

十一日

霜月一日 けふの申冬至になりぬ。

月のかしらにかゝる日あたれば、こんとしの秋は田のみいとよければ、ものきずとても牛かふべきよしのことわざを人ごとにいへり。

二日 あしたの間風とく吹て、ひるはれたり。
あたゝかさは如月のころほひにひとしくくれたり。

三日 よべより雨ふる。此日山居にいたりて蜂屋のかりに入る。
あるじ、とし頃近どなりの須輪、新山、八幡のならび建給ふにまうでて、日ひと日おこたることなふ。此朔、例のごとくおきつきにぬかづきければ、いかなるわざにやありけん、さゝやかなるいしなごに三といふ文字書たりけるを、ゆくりなふひろひえて家にもていたりて、ある神のみまへにおきて、みわすへていのりける。
こは、としごろのねぎごと、うけ給ひけんしるしにや。
はた、よね、もゝの枡を石といふなれば、三の石、又みそじもや、きみより給ふならんなど人ごとにとなへ聞えければ、此こゝろによそへて、

 

   さヾれ石のなれるをや見んいはしみづ通ふこゝろのきよきあまりに

 

四日 よべより中和のやにありて胤次、為信など歌よみて、とく起出て雪いとおもしろければ、かなたこなたと逍遙すれば、ふせるがごときやに、どよめきあらそふはいかにと、かたぶき過れば、ある男、かねごとしたる女をもとめて、こゝにやねたる、かしこにやふしたると、空ごとゝもしらでさぐりありくに、?風引まはしてある男のねたるを、このうちにこそあれとて、みそかに入て、まづ、かしらなでんと、あとまくらもしれねば、もさ/\〔あが妻をよばふ詞也〕といひつつ、かしらおさへつれど、此あたりのならひとて男女老たるわかき、みな、はぢ巻といひて、かしらに布をまとひてふしたれば、さらに男女のけぢめも、夜のかしらはわいだめなふ。
かゝれど男、女とひたすらに思ひ入て、をなじ枕に手さし出せば、ふしたる男、あがめ(女)のしのび来るとこゝろえて、ゐよりたる男の手をとりて、ひたもの、あがふところにさし入て、あたゝめてねてけり。

いかぺにかありけん、ふたりの男おどろきて、こは、みな男にこそあなれとてあきれて、たがひのはぢをやかくさんとて、いかヾして来りしぞ、いかヾして引入しぞと物もてうち合、あらがひて明たるどよみにこそと、雪にたふれたる中垣のこなたより、のぞきたる人のつぶやくにてしりぬ。

五日 雪いとおかしうふりそへてければ、いで見んとて、こを見つゝ山居にいたりぬ。人々、常雄がやにあるじすとていぎぬ。われは頭いたみていかじ。

六日 けふも蜂屋のたちにくれたり。

七日 中野といふ処に行に、なにがしのもとにいねたり。

八日 雪いたくふりぬ。朝とく、あるじのあないにておなじすぢを出て、あねたい(水沢市)に来て佐々木のやにとまる。

九日 きのふのをなじ宿なり。
やの女のわらは、みすぢそとて、ひと日に三筋の麻糸引て是をためおきて、老人など、よみ路に行かたびらををりてきせ、又さならでも、あがおやなどにすとてせり。
一日に三すぢうみて、一とせに一むらの布にたれりとぞ。

十日 風のこゝちにてふしぬ。

十一日 あしたより雨もよに、ひるより夕にいたりていたくふり来けり。

十二日 月かげに人の行を見つつ、

 

   みちの辺の氷るみゆきをふみしだき行たび人のこゑさむげなり

 

十三日 あしたより雪ふる。此ころ田の神祭るとて、家ごとにもちゐつきてあるじせり。
けふもあしがきのとに、さるわざするとてまかる。

十四日 はちやのかりに行とて夕ぐれちかくいたらんといへば、さいだつ翁、はやすゝみ、いろどきになりさふらふとこたふるに、

 

   雪にふす竹のした枝にねぐらとふすヾめいろどきたどる岨道

 

十五日 さゝ木のやにまかる。真白のなかに、きたなげなる道一すぢわだかまれるは、山賤のかりにふみわきたるといふに、

 

   柴人のしば/\わくるほど見えて雪にひちすぢつヾくかよひぢ

 

十六日 雪はこぼすがごとくにふり来て、さえたり。家毎にあぶら餅とてうすつきいとなむは、此とし、かゝげともす、あぶらしめおさむるそのいはひとて、せざるはなし。

十七日 よひのほど雨ふりて暁の月いとよし。

十二月朔日 あしたのま雪いたくふりて、ひる晴たり。

二日 きのふにひとし。

三日 ひつぢのひとつに、なへふるふ。雪はいよゝふりてくれになりぬ。

四日   [空白]

 

 

 

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