晴耕雨読    趣味と生活の覚書

  1953年秋田県生まれ。趣味は、山、本、音楽、PC、その他。硬化しつつある頭を柔軟にすべく、思いつくことをなんでも書いています。あわせて、江戸時代後期の紀行家菅江真澄の原文テキストを載せていきます。

クマ出没 注意!

二十代の頃に、秋田県中央部の森吉山に一人で登っていた。

そしたら、こんな看板があった。

「クマ出没 注意!」

アスファルト舗装はされていないが、トラックの通れるような広い林道である。

「注意」と言われても、クマよけの鈴も持っていなかった。

まあ、大丈夫だろう、と歩き続けた。

目的地は、営林署の作業員用の宿舎である。

かなり大きな二階建ての建物だが、登山者用に開放されていた。

私は2階に陣取って、寝袋を広げた。

管理人はいなくて無人なので、自家発電の設備は動いてなくて、電灯もつかない。

夜になると真っ暗で、他に登山者はいなくて、私ひとりになった。

炊事場に、山の湧き水を引いた蛇口があって、水は流れっぱなしだった。

水に空気が混じっているのか、ときどきとんでもなく大きな音を立てた。

寝つこうとすると、その音に驚かされた。

しかも、真っ暗な中広い建物にひとりで、ぐっすり寝れなかった。

その時は、クマ出没の看板のことは、忘れていた。

熊が出るかもしれないと考えていたら、怖くてとても寝ていられなかっただろう。

40年くらい昔のことである。

今なら、怖くてとても泊まれない。

 

この数週間、テレビのニュースでは、日本の至る所で熊が現れたと伝えている。

私の郷里である秋田県は、毎日のように熊が現れて、死者や負傷者が出ている。

秋田大学の構内にまで、出没している。

私は、青森県との境の白神山地の南麓の山村で、生まれて育った。

18歳で秋田を離れるまで、熊が出たということを聞いたことがなかった気がする。

一度だけ、カモシカが捕まったという話は聞いている。

だから、熊がいるなんて考えたことがなかった。

たしかに、秋田県の北部は熊狩りを生業にする「マタギ」という集団が、最近まで残っていたことは知っている。

もともと熊の多い地方だったのだろうが、熊の行動範囲が広くなったのか、それとも熊の頭数が増えているのか。

www.police.pref.akita.lg.jp

今年は、夏の気温が高すぎて、山のドングリなどの生育が悪かったのが、熊が里に出てくる原因じゃないか、 と言われている。

そう言えば、私の住む集合住宅の敷地に隣接して、柏市の公園がある。

滑り台やブランコ、鉄棒、砂場のある子どもの遊び場のための公園である。

他にある公園と違うのは、樹木の異様な多さである。

もともとが、森林だったようで、公園の半分くらいは林のままである。

遊び場にも樹木が多く残っていて、秋になるとドングリがいっぱい落ちている。

先日、孫娘が遊びに来て、ブランコに乗るというので、公園に行った。

最近できるようになった「立ち乗り」を見せてくれた。

孫娘のブランコを見ながら、自分の足元を見ると、ドングリが落ちている。

ところが、いつものドングリと違っている。

形もやせていて細身で、例年のようにぷっくりしていないし、ツヤもない。

色もきれいな茶色ではなく、半分緑色の部分が残っていたりする。

これって、やはりドングリの生育が良くなかった、ということだろうか。

 

私の育った郷里の村は、白神山地から流れ出る川沿いにある山間の農村だった。

でも、同時に林業の村でもあった。

父は木材関係の仕事をしていたし、母の兄は営林署に勤めていたし、私の上の姉も営林署に勤めている人と結婚した。

なにしろ、自宅の数十メートル前に、森林鉄道の線路があった。

木材運搬用の鉄道である。

終点の国鉄の駅近くには、大きな製材所があった。

とにかく、多くの人たちが山の中で働いていたのだろう。

それは、日本全国の山間部で同じだったと思う。

 

今は死語となってしまったが、「三公社五現業」という言葉があって、春闘など賃上げなどの時期に、マスコミで使われた。

政府が行なっている国営事業のことだった。

「三公社」は、日本国有鉄道日本電信電話公社日本専売公社であり、「五現業」は、郵政、国有林野、印刷、造幣、アルコール専売である。

他の公務員と同様に、団結権と団体交渉権はあるが、争議権は認められていなかったので、毎年のように問題化していた。

中曽根内閣の頃に、国営事業の民営化が進められ、三公社と五現業のうちの郵政は、いわゆるJR、NTT、JT日本郵便などの「特殊会社」となった。

その他の現業は、「独立行政法人」となったが、国有林野事業だけは「企業的運営廃止」となっている。

安価な輸入木材の増加によって事業が困難になっていて、赤字が膨れ上がっていた。

私は、1970年代に郷里を離れていてよく知らなかったが、営林署などの事業は大幅に業務縮小されていたのだろう。

つまり、山で働く人たちは考えられないぐらいに、少なくなってしまったのだと思う。

 

秋田県の熊出没情報によると、10月までで今年の出没情報受理件数は 2,388件となっている。

これって、とんでもない数字じゃないのかな。

いったいどれだけの熊が、秋田の山にいるのだろう。

山間の村は、過疎化が進んでいるのだから、山に入る人はどんどん少なくなっている。

住んでる人間より熊の方が多い、というのが冗談でなくなる、こともあるかも知れない。

 

 

 

 

seiko-udoku.hatenadiary.jp

seiko-udoku.hatenadiary.jp

seiko-udoku.hatenadiary.jp

seiko-udoku.hatenadiary.jp

seiko-udoku.hatenadiary.jp

seiko-udoku.hatenadiary.jp

seiko-udoku.hatenadiary.jp

seiko-udoku.hatenadiary.jp

seiko-udoku.hatenadiary.jp

seiko-udoku.hatenadiary.jp

seiko-udoku.hatenadiary.jp

seiko-udoku.hatenadiary.jp

seiko-udoku.hatenadiary.jp

seiko-udoku.hatenadiary.jp

seiko-udoku.hatenadiary.jp