私の住んでいるところは、光ヶ丘の台地上にあり、まわりよりも小高くなっている。
全体的に、東西南北を谷で囲まれているような感じである。
田んぼがあるような低地は、大津川の流れに近いところまで行かないとない。
ふだん、自宅近くを散歩していても、田んぼを見ることはできない。
だから、久しぶりに遠出をしたら、稲刈りが終わってしまっていた、ということになる。
この台地の見通しのいいところからまわりを見ると、緑の森が思ったよりも多く残っていることに気がつく。
「里山」ということばがある。
集落、人里に隣接していて、人間の影響を受けた生態系が存在する山のことをいうらしい。
集落の生活の延長上にある山ということだろうか。
私の住んでる柏市も、隣接する松戸市でも、里山を保護していこうとする活動をしている。
里山といっても、現在は私有地である。
無断で立ち入ることは、できない。
そのような森や林を、地域の住民が立ち入って楽しめるように、所有者の了解のもとに、開放している。
もちろん、所有者にとっても、税制面などの処置があるのだろう。
車で走っていると、空き地や林だったところが、住宅地にされているところにいくつも出会う。
ずいぶんと長い間人が住んでないような住宅や、使われていない店舗はあちらこちらで見かける。
それなのに、新しい住宅は次々と作られている。
このところ、毎日のように通っていたコインランドリーの脇の空き地も、あれよあれよという間に、きれいに造成された。
まだ、住宅は建っていない。
何ヶ月か前には、片隅にカボチャの花が咲いていたんだけどな。
その奥の方は、鬱蒼とした森林がまだ残っている。
この森林も、いつかはなくなってしまうのだろうか。
森林の手前に、巨大な携帯電話用のアンテナが立っていた。
こんなのを、いろんなところで見るような気がする。
ちょっとずつ形が違ってるような気もするので、キャリアごとに建設してるのだろうか。
ドコモ、KDDI、ソフトバンク、が三大キャリアで、これに楽天モバイルが加わるらしい。
森林をよく見ていたら、森の左手の上の方にアンテナの先端が見えた。
この森も向こう側に、もう一つアンテナが建っているのだろう。
キャリアはウイルコムで、シャープのZERO3という機種だった。
PHSというのは、personal handy-phone system の略だそうだ。
当初は、personal handy phone でPHP だったらしいが、PHP研究所からのクレームで変えたらしい。
PHSの基地局の出力は小さくて、数百メートルくらいしかカバーできなかったという。
PHSのアンテナは、電話ボックスの上にあると言われていた。
携帯電話基地局の出力は大きいので、数キロメートルをカバーするらしいが、それでも日本全体を考えると、とんでもなく多くの基地局が必要になるだろう。
それぞれのキャリアがそれをやるのは、無駄が多いように思える。
もう少し、利巧なやり方があるんじゃないのかな。
私が、まだ勤めていた頃、駅まで歩いていたのだが、その途中に森があった。
ある時から、その森の隅で工事が始まった。
いったい何の工事だろう、と思っていた。
数ヶ月の工事が進むうちに、携帯電話の基地局アンテナということがわかった。
基地局から出る電波は、まわりの人たちの健康に害はないのかな、などと考えていた。
工事が終わって、これで完成だな、と思っていたら、そのうちに解体工事が始まった。
たぶん、まだ使ってないのに、どういうこと、と思った。
土地は、何事もなかったように、森だったところがただの空き地になった。
後で知った情報によると、土地は借地で、借地権者が所有者に無断で、契約をしてしまったらしい。
ウソのような、ほんとの話である。
誰かが、やるべきことをやらなかったのだろうが、あの建設費用はどのように処理されたのだろうと、思った。
世の中には、考えられないような不思議なことがあるのである。